「残された時間の少ない人にその限られた時間を楽しく過ごしてほしい。」◆あきたGP列伝 市原利晃先生編

 秋田大学で5年生から6年生にかけて行われるClinical Clerkship 2(CC2)で総合診療・検査診断学講座をローテしてくださった皆さんに、自分の知りたい事や今後のライフプランなどに役立てる目的で実習に伺った病院の先生へインタビューを行い、医師としてのマインドやロールモデルなど学ぶ事を課題としています。こちらを『あきたGP列伝』として掲載します。
今回は、秋田往診クリニック理事長 市原 利晃 先生へ熊谷琢朗さん・山川光平さんがインタビューした内容をご紹介します。

【山川】クリニックを始めたきっかけを教えてください。

【市原理事長】外科医として働く中で、手術をしても治らない患者さんも少なくないという現実に直面した事です。それで自分の願いとしては残された時間の少ない人に、その限られた時間を楽しく過ごして欲しいと考え、それなら自分がその基盤を作ろうと思い、秋田往診クリニックを開業しました。

【熊谷】秋田での在宅医療の先駆けということもあり、開業にあたっては苦労されたこともあるのではないでしょうか?

【市原理事長】開業は苦労だらけでした。(笑)
それこそ最初は何もできないだろと思われていましたたからね。実際はできることはたくさんあるのに。そういう訳で患者さんも少なかったし、そこは開業してる人はみんなそうだけど知ってもらうっていうところからのスタートでした。
 往診ということで、自分に何が出来るか、中々伝わりづらくて苦労しました。事例検討会や講演会を開き、在宅医療に関わる人たちの関係性の構築、在宅医療を認知してもらうっていう面では、今までの複数病院で外科医として自分が築いてきた人との繋がりが活きた場面でもありました。

【山川】開業当初は医師、看護師、事務を合わせて約4名ほどで運営していたそうですが、今後は?

【市原理事長】全然!まだまだこれからって感じです。職員を増やすのは最初から決めていた事ですし、そのために病院内の部屋もたくさん作りましたから。(笑) (現在、秋田往診クリニックの職員は約15名) 冒頭でも話した通り自分の願いとしては「残された時間の少ない人にそのお限られた時間を楽しく過ごしてほしい」、現状ではその時間が本当に残りわずかな状態でうちに来ることになる人も多いから。もっと往診クリニックの存在を患者さんにも、病院にも周知してもらえたらと思います。ですので、今も昔も課題は啓発です!

【熊谷】これからより需要が高まる分野ですからね。特にマンパワーが不可欠な分野でもありますし、患者さんはもちろん、そういった意味でも医療者にもまだまだ知ってもらう必要はありますね。 お話を聞くと凄く在宅医療が魅力的に思えます。
 実は進路で悩んでまして、何か激励の言葉など頂けませんか?

【市原理事長】とにかく学生なら、まず、自分の興味があること、好きなことが何か、それを考えてください。自分はそうだったけど好きなことならどんどん積極的になれたし、苦労も厭いませんでした。考えることは多いだろうけど、医者としての人生は長いです。
一生勉強、修行です。人生、何が起こるかは分からないけどそれだけは言えます。
まずは国家試験!これは基本的な疾患のストーリーが押さえられるので大事です!
しっかりと勉強頑張ってください!

【山川】今後の課題と目標は?

【市原理事長】在宅医療についての認知がまだまだ足りません。在宅医療には多職種の連携が必須であり、より多くの人々に認知してもらう必要があります。認知を進めて、在宅医療という選択肢が当たり前に考慮されるようにしたいですし、在宅医療に携わる若手医師が足りません。
 大学での講義や講演会を通じて在宅医療を認知してもらうとともに、その必要性や魅力を伝えています。自分がいま患者さんにしているように、いつか自分も自宅で最期を迎えられるような世の中にしたいと考えています。

市原理事長へのインタビューを終えて  ~インタビュアー(熊谷琢朗・山川光平)~

とても勉強になりました!悩みは多いですが、確かにまだまだ悩むだけの時間はありますね。じっくり考えてみます。自分の興味、関心を今一度見つめ直してみます。
まずは国試合格目指して勉強頑張ります! 本日はご指導ありがとうございました!

《 市原 利晃 Ichihara Toshiaki 》
医療法人社団隆仁会 秋田往診クリニック 理事長

秋田大学医学部大学院卒業、同大学第一外科・大曲中通病院・本荘第一病院外科・雄勝中央病院外科科長として活躍後、同大学第一外科勤務を経て 2007年 秋田往診クリニックを開業

<免許・資格>医学博士、臨床教授、日本在宅医学会指導医・専門医、日本プライマリケア連合学会指導医・認定医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会指導医・認定登録医、身体障害者福祉法指定医、ボトックス注講習実技セミナー受講医