「公衆衛生×救急」 〜MPHの経験〜

救急医の平澤暢史です。
総合診療医センターに所属し、日常的には救急専門医として高度救命救急センターで勤務しています。

“Protecting Health, Saving Lives, Millions at Times.” (公衆衛生の世界で有名な言葉です)  

救急医として目の前の患者さんの救命だけでなく、システムや地域の医療を改善させることに興味がありましたが、一臨床医としては限界も感じていました。そんな時にこの言葉にすごく心を動かされました。あまり深く考えずにMaster of Public Health(MPH)へ進み、1年間で、MPHの修士号を得てきました。
公衆衛生学は、地域(たくさん)の人々が健康になるためにはどうすれば良いか?を探求する医学分野です。公衆衛生を1-2年で広く浅く学べるのがMaster of Public Health(MPH)のコースです。


公衆衛生の分野は非常に幅広く、どれも面白いのですが、社会疫学の分野は印象的でした。住む場所や文化的背景、学歴や収入、家族や友人との交流などが、人の健康に影響することを科学的に実証し、実現可能な形で社会へ施策を実装していく過程を学びました。自分の専門の救命救急医療の、その先の患者さんの生活まで見通す力になったと感じます。

また医師には臨床疫学が比較的人気で、臨床研究のデザインや統計処理を学べました。 在学中にレベルの高い論文を仕上げる方もいますが、「MPHを取ったから、自分一人で臨床研究ができる」という人はなかなかいません。MPHを足がかりに博士課程へと進む人も沢山います。MPH卒業生の進路は様々で、バリバリの研究者、行政やシンクタンクで医療政策に関わる、医療ベンチャーでアプリ開発、など本当に多様です。
同級生は医学系だけでなく、例えば法学部出身方もいて、刺激的な一年でした。

一人で何か実現させる能力を身につけるには至りませんでしたが、幅広く学び、地域の医療システムや公衆衛生に実務するための基礎を身につけたと思います。
卒後秋田に赴任して、臨床中心の生活をしつつ、今はドクターカーの運営などにも関わっています。「公衆衛生×救急」で、秋田でのプロジェクト立案や研究に活かし、救急医療体制に少しでも貢献できればと考えています。