総合診療の魅力

初めまして。CC2 Ⅶ期で5週間、総合診療・検査診断学講座で実習させていただいております、ドラマ好きの吉田光希と申します!

私は、総合診療科に興味があるのですが実習を通した総合診療の魅力を少し書いてみたいと思いました。

突然ですが、総合診療科のイメージとして2通りあると思いますが、皆さんはどちらのイメージでしょうか?

「1つ目は鑑別診断をじっくりとやって各専門家に振り分けるタイプ」「2つ目はもちろんそれもあるのだけれども、どちらかというとプライマリー・ケアを中心として患者さんの入口となるタイプ」

どちらも重要だと思いますが、やるとしたらどちらをやりたいでしょうか?

私の話をすると、後者に興味を持っています。

「専門外なので診れません」という言葉を耳にしたことがあると思います。直接私が言われたことは無いのですが、当時観ていた作品の中で、そうした言葉を聞いたのですが何となく違和感がありました。医学生となって勉強している今では少しその言葉の気持ちが分かるのですが、やはり今でもその言葉を口にしたくないなと考えています。

ところで、健康の社会的決定要因〈SDH; Social determinants of health〉というものがあるのですが、その概念を知ってからは病気だけを診ていては真に治すことは出来ないのだなと感じました。SDHは、WHOの定義において「健康に影響を与える非医学的な因子であり、その人が生まれ育った環境、仕事、生活、年齢、またそれらを形成する要因や社会体系」となっています。

例えば、ドライバーの方が高血圧や糖尿病の生活習慣病で不定期通院していて食事療法に難渋してしまう、薬のアドヒアランスが悪いなどが生じることがあります。何も考えなければ、よくある「困った患者さん」でしょう。しかし、ドライバーという職業が置かれている社会的な状況(深夜も運転をし続けなければならない、少しでも遅れるとお客さんから意見が来てしまうなど)にちょっとでも考えを巡らせてみると、その生活・仕事・社会状況によって食事や睡眠の時間が不規則になっており、そして「食後」の薬だったために処方薬を飲んでいなかったという事実に気づけるかも知れません。もしかしたら、この方には家で介護をしなければならない父親がいて病院に行っている暇があれば介護に時間を費やしたいという家庭的な状況があるかも知れません。そんな状況下でいくら医師が説明しても、患者側は「分かっているけれども出来ない、けど自分が悪いから…」と思って言いも出せず「分かってくれない」となってしまうでしょうし、医師にとっては「何度言っても言うことを聞かない困った患者」となってしまうでしょう。

一方、様々な場面で患者とのラポールを形成することが大切だと言うことは教わりますが、上記の例では形成できてないのは明らかで、次第にドロップアウトしてしまいそうです。ですが、そうした患者さんの生活の背景までは「考えてみよう」と思わないと考えることがないように感じます。実際、学生の身として〇〇科の授業や試験問題をやっていてもそこを一々考えていたらきりが無いですし、答えが選べません。つまり、医学として考える際はそういうことを排除して考えないといけないのです(もちろん、そういうテーマを題材にした問題は別ですが…)。そして、普段の診療実習では意識しないと医学として考える方向になってしまうのが現実だと思いますし、そこまで多く患者と話す機会が無いかも知れません。

ですが、今回総合診療部の実習では新患外来の予診を担当する中で患者さんの生活も尋ねていきます。そうすると、どういった生活をしていてどういう価値観を持っているのか、自分では今の症状・病気についてどう思っているのか、何に困っているのかなど、普段よりは少しですが深いところまで聴くことができますし、患者さんへの解像度が上がります。そこに私は総合診療の魅力があると思います!ちなみにですが、話をするのにもコツが必要だそうで、例えばアイスブレイクと呼ばれる軽い雑談を挟むものも技だったりするそうです。実際、他科の実習などで患者さんと話していると一問一答になってしまってそれ以上聴くことができないということを経験しているのではないでしょうか。学生の時はそんなに深く考えないけれども医師になってから不可欠なことに気付くこともできる実習だと思います。

そうした医師として働くうえで大切な価値観は、診療所や様々な体型の病院(大学病院を含めて)で実習する中で随所に散りばめられているように感じます。下記の写真に写っている「まろん」も良い関係性を築いていく一つの要素になっているのも面白いなと思います。

色々書いてしまいましたが、「総合診療は人気になっている」「需要が増えている」というような月並みなものだけでなく、多くの魅力がまだ見えていないだけではないのかなと感じます。冒頭にも書きましたが、「専門外なので診れません」という医師よりは「せっかく病院なんかに来てくれて今現在困っているのだったら、これは医師としてできるかも知れない」というものを見つけて行える医師になりたいです。