胃ろう

「胃ろう」とは,腹壁を通したチューブを胃に留置した通り道のことで,口から食べられなくても胃の中へ食べ物を入れられます.「PEG」(経皮内視鏡的胃ろう造設術)の開発により,上部消化管内視鏡を用いて局所麻酔でチューブを胃に留置できるようになりました.病気などのために食事が難しい小児のような体力の弱い患者さんでも安全に手術を受けられるようになりました.一方で,生理的な現象である老衰の影響で食事ができなくなった場合,胃ろうを応用することについて,議論されています.胃ろうがきっかけで寝たきりとなる高齢者が増えており,胃ろうを含めた経管栄養管理の在り方については再検討されいます.

しかし,胃ろうは食事が困難な患者さんにとって有効な治療法であることも事実です.高齢であっても適切な利用で体力を維持できる可能性があります.実際に胃ろうの上手な利用で食事できるようになった例もあります.

旦那さんと2人暮らしの83歳の女性は,食欲がなくなり食事ができなくなっていました.ある日,意識がもうろうとしたため救急車で病院へ搬送され,脱水症と診断されました.点滴などの治療で症状は落ち着きましたが,経口摂取は進みませんでした.高齢でしたが,食欲がなくて食事できないことを除けば水分摂取時も誤嚥はなく,簡単な身の回りのことも自分でできたため,胃ろうを造設する方針となりました.手術は問題なく終わり,旦那さんも管理方法を習得して,3週間後には自宅へ帰りました.

退院当初は食欲がなく,栄養は薬品に頼る状態でしたが,退院して3カ月がたったころから食欲が出てきて経口摂取を再開できました.その後,安定して食事ができるようになったため,胃ろうを抜去することができました.栄養状態の改善により体力が回復し,それが食欲の改善,経口摂取の再開へとつながったと考えられます.

嚥下機能に問題がないこと,認知機能も保たれていること,経管栄養管理を行える環境にあることなど,胃ろうを有効利用するための条件があります.しかし,「食べられないから胃ろう」という発想だけではなく,「食べるために胃ろう」と検討することも必要なのかもしれません.医療はもっと生活に寄り添えるはずです.