各地域に適した地域包括ケア体制の確立を

 2013年10月に英国の家庭医である澤憲明医師のクリニックを訪ね、英国の医療福祉制度を見学させていただきました。

 福祉施設は日本の特別養護老人ホームに当たるナーシングホームのほか、介護士がいる老人ホームやグループホーム、管理人のみのシェルタードハウジングやシェアードハウスなどさまざまな形態が存在します。日本のような厳密な分類ではなく、ナースが在駐するナーシングホーム以外は大差がないようでした。

イギリス サッチャー元首相(左側)のご家族も利用するナーシングホーム

 施設での医療もGPが受け持っています。介護は「できなくなったことをできるように支援する」という考えで、「できなくなったことをやってあげる」という日本の価値観とは違うと感じました。
 ナーシングホームの雰囲気は日本の特養と大差なく、介護内容も大きな違いはないようでしたが、英国民の多くは自分の口で食事をして歩けるという自立した生活を行うことこそが自分の人生と考えています。子供の世話にならず自立した生活を維持するため、自ら進んで福祉施設を利用していました。

 そういった医療と介護、老衰に対する認識、老後の生活に対する価値観の違いが、GPをはじめとする医療介護システム、福祉の施設体制にも表れているのかもしれません。ホスピス在院日数が13日と短いのも、自立した生活を目指すことが在宅療養の根底にあるからだと思います。医療が必要であれば全額NHSが負担することになりますが、介護保険制度はなく、医療でなければ全額自己負担となります。福祉施設利用のコストは月30万~40万円とのことですが、個人の財産の多寡によって国からの援助はあるようです。
 高齢化が進む本県を元気にするためには、高齢者が元気で生活できなければなりません。健康寿命を伸ばすため、医療福祉ができることはたくさんあります。世界のさまざまなケアシステムを参考にしつつ、日本に合った体制づくりを行う時期にきています。今後はより一層、多職種との連携を成熟させ、各地域に適した地域包括ケア体制の確立を目指す必要があるのかもしれません。

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