<緩和ケア実習にて>総合診療・検査診断学講座

 こんにちは!医学生の畠山駿と申します。
10月から11月にかけて5週間、総合診療・検査診断学講座で実習させていただきました。その中で、緩和ケアセンターでの実習があり、緩和ケアについて考えさせられるきっかけとなりました。そこで私からは、家族会議という取り組みについてご紹介させていただきたいと思います。

図1:秋田大学病院緩和ケアセンター

図2:人生会議ロゴマーク

 皆さんは人生会議という言葉をご存知でしょうか。
 人生会議とは、アドバンスト・ケア・プランニング(Advance Care Planning : 以下、ACPと略す)の愛称です。あなたが大切にしていることことや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自ら考え、また、あなたの信頼する人たちと話し合い、共有することを言います。誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気をする可能性があります。
しかし終末期においては、約70%の患者で、これからの医療やケアについて自分で決めたり、人に伝えることができなくなるといわれています。このようなときに、家族などあなたの信頼できる人が「あなたなら、たぶん、こう考えるだろう」とあなたの気持ちを想像しながら、医療・ケアチームと医療やケアについて話し合いをすることになります。そのときに、人生会議をしていること、つまりあなたの信頼している人が、あなたの価値観や気持ちをよく知っていることが重要となります。

 このような考え方は、これまでにもなかったわけではありません。過去には、アドバンス・ディレクティブという、将来自らが判断能力を失った際に自分に対して行われる医療行為に対する意向を前もって意思表示することと定義される考え方がありました。これは、予め自分自身の希望を前もって文書として残しておくことが、将来的な治療やケアの満足度を高めることを期待して考えられたものでした。しかし実際は、患者さん自身が将来を予想することが難しく、現時点での選択が将来的な希望とならない可能性があることで満足度として向上することはありませんでした。
それを改善すべくして考えられたものが、ACP、人生会議の考え方です。患者さんとその代理決定者、医療者が患者さんの意向や大切とすることをあらかじめ話し合うというプロセスを共有すること、またその話し合いを繰り返すことで患者さんのその時その時の意向を理解し、状況に対応できるようになります。

 私自身、家族会議について詳しく調べたのは今回が初めてですが、後悔していることがあります。
私がまだ中学生だった頃のことです。私の曽祖父は90歳を超えてなお現役で、身の回りのことはもちろん、畑仕事もひとりでこなすほど元気でした。しかし、その曽祖父は脳梗塞を起こしてしまい、意思疎通が取れない状況になってしまいました。あんなにも元気だった曽祖父とまともに会話もできなくなってしまったことでわたしが一番に思ったことは、もっと話を聞いておけばよかったということでした。
 いつ、どんなタイミングで家族や大切な人の考えを聞くことができなくなるかわかりません。前もって、家族や大切な人がどのように生きていきたいか、どのようなことを大切に考えているかなど話してみてはいかがでしょうか。

参考文献
神戸大学医学研究科・医学部 “人生会議について”. ゼロから始める人生会議. (参照2023-11-02)