秋田往診クリニックでの実習を経て GP列伝

 秋田大学で5年生から6年生にかけて行われるClinical Clerkship 2(CC2)で総合診療・検査診断学講座をローテしてくださった皆さんに、自分の知りたい事や今後のライフプランなどに役立てる目的で実習に伺った病院の先生から、医師としてのマインドやロールモデルなど学ぶ事を課題としています。こちらを『あきたGP列伝』として掲載します。
 今回は、秋田往診クリニックで実習した、桜井海斗さん(5年生)が実習の感想を投稿してくれました。

 CC1,CC2と二年に及ぶ医学部での実習の中でも、今回の秋田往診クリニックでの実習は実習先が病院ではないという点において特異な実習であった。普段白衣を着て病院にて提供される医療の場に参加することが実習であると思っていた自分にとって今回の実習は新鮮な驚きと新たな発見をもたらした。

 そもそも往診とは、患者が医師のいる病院にやってくるという通常の医療の在り方とは真逆に、医師が他の医療スタッフとともに患者が普段生活している家庭なり施設なりに訪れるというものである。
畢竟大きな検査設備も豊富なマンパワーも得られず、その場で患者の体調・容体を確認し評価、治療の有無を判断しなければならない。
これは我々医学生が通常学ぶ医療とは全く違った環境における医療であり、国家試験のための勉強を通じて学ぶ知識だけでは対応しきれないものである。

 また、往診の性質上通常の医療と大きく異なる点が、常に患者の置かれている社会的事情を考慮しなければならないということだ。
往診クリニックで伺った市原先生の言葉で一番印象深かったのが、「病院では往々にして医学上の正解を追求しているが、往診では医療上の正解を追及しなければならない」というものだ。
すなわち、疾患を治療したらそれでおしまいという訳ではなく、住宅の状況・家族の状況・地域とのつながりや金銭的な事情などあらゆる要素を考慮に入れたうえでその患者本人だけでなく、関わる人全員にとっての最善は何かという点を考え、追求していく必要がある。
実際に自分が伺った範囲だけでも、寝たきりの母親の面倒を一人で見ざるを得ないが自身も働けていない息子や、病院に入院してもせん妄が酷くすぐに退院させられてしまい、金銭的にも施設にいれる余裕もなく行き場のない夫の面倒を見る妻などそれぞれに社会的な困難さがあることを実感した。

 このような状況でも可能な限り医療を提供し、最善を探るのが往診という仕事の困難さでもあり魅力でもあるのだと思う。

<秋田往診クリニック紹介動画>