「これからの在宅ケア」 

GPNETメンバーの、秋田往診クリニック 市原利晃理事長 が在宅・往診医療についての経験やマインドを語っていただきました。

 在宅ケアには地域における多職種連携の充実が大切です。
訪問看護ステーション・介護関係・福祉用具関係など多くの職種が関係しており、お互い気軽に相談し合えることが、充実した連携のためにも理想的です。

 気軽に連絡を取り合える関係を作るためには、お互いに顔見知りになるきっかけが必要ですので、在宅ケアに関わるスタッフ向けのカンファレンス、さまざまな研究会やセミナーを開催し、地域連携の充実を目指しています。
 実際に、そこに参加していただいた歯科医師・薬剤師・栄養士の連携が、誤嚥性肺炎の予防につながるケースも多く、成果が出てきています。

 現実的に福祉施設は在宅と同等であり、今後はサービス付き高齢者向け住宅やグループホームなどを中心に、特別養護老人ホーム・老人保健施設・小規模多機能施設・ショートステイなどの福祉施設にもこの連携に加わっていただきながら、高齢化の進む秋田県独自の在宅ネットワークを整備していことができれば、秋田のケアは飛躍的に充実するはずです。

 在宅ケアは、日常生活を維持しながら治療を継続するための選択肢の一つで、「住み慣れた場所で生活できるように医療的に支援すること」です。
これまでの在宅ケアでは、ムセがあるから食事の方法や食物の形態を変更する、歩けないから歩行の補助する、痛いから鎮痛剤を処方するなど、医療・看護・介護の多くの場面で対症療法(症状に対する対策)が主でした。
それぞれの部門での経験の積み重ねにより、対症療法の効果については大きな成果が出ています。

その上でこれからは、日常生活を基本とする在宅ケアではそれらをさらに一歩進めて、病気や身体心身の機能低下予防と、隠れている予備能力を引き出すリハビリにも目を向けていく必要があると感じています。

それは、新しい「支える医療」の形でもあります。
普段の生活をしながら治療し、身体の機能低下を予防し、さらに今まで以上に快適な生活を目指します。
 これからのためにも、ひとりひとりが自分の価値観を振り返り、家族の価値観も見つめ直して、自分やご家族が病気になったとき・寝たきりになったとき、どう対応するかを元気な時に話し合っておくことが大切です。

それがACP(Advance Care Planning)につながります。