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男鹿みなと市民病院 松本奈津美先生(総合診療・家庭医専攻医)

 秋田大学の総合診療プログラムの専攻医1年目(インタビュー当時)です。当院の総合診療プログラムは4年間で、内科が1年、小児科と救急がそれぞれ3カ月、地域の診療所規模の病院と病院の総合診療を合わせて1年半以上経験する必要があります。現在は、内科のローテーションとして血液内科で診察に携わっています。

総合診療医を志した経緯を教えてください

 秋田大学医学部を卒業後、大館市立総合病院で2年間研修医として働きました。私は、もともと田舎が好きなことから、地域医療に携わるために何でも診られる医師になれればと考えていました。ただ、秋田県内では、内科や外科の医師が地域の診療所に勤務する形態が多く、総合診療医はほとんどいないことから迷いもありました。

 そのような折、総合診療が専門の千葉県館山市のクリニックを見学した際に「家庭医療の勉強をするようになってから、外来での『打率』が上がった」との話を指導医から聞きました。「打率」とは「患者さんに合った診療を行うことで役に立つことができた確率」とのことでした。そもそも私が医者になろうと思った理由は「人を幸せにしたい、幸せの根底にある健康を守りたい」と考えたからでした。こちらの病院で聞いた話に可能性を感じ、また、2人の先輩医師に背中を押されたこともあり、総合診療医の道を選びました。

実際に総合診療に携わっていかがですか?

 医学的な知識も総合診療のための技術もまだまだ足りないため、診療で迷うこともあります。そのようなときに経験の豊富な医師に相談すると、目から鱗が落ちるような答えをいただくことがあります。どのような場面で、どのような「考え方」をするのかについて勉強させていただいています。

 診療をしていると、医学的な問題だけでは解決できないことや、医療的には正しいことでも、患者さんにとっては最善の選択ではないというような壁にぶつかることもあります。特に高齢者が多い秋田では、最先端の治療が必ずしも最良の答えにならないこともあります。そのようなときに、より適切な判断を選択するためには技術があって、それを学ぶことができるのが面白いと思っています。

「総合診療医センター」は総合診療医を目指す人の支援を行っていますね

  総合診療医は、いい意味で医師らしくない、とても気さくで話しやすい先生が多いです。話しているうちに、思わず本音を話してしまうこともあります。医師である前に、一人の人間として勉強させていただいています。

 現在、私を含めて3人が総合診療医のための専攻医プログラムを受けていますが、まだまだ少ないのが現状です。やはり、スタッフが多いほど対応できる業務も増えるはずなので、専攻医がもっと増えればいいなと思っています。

どのような人が総合診療医に向いていると思いますか?

 総合診療の勉強は、病気だけではなく、患者さんの趣味や嗜好、生活環境、家族構成などまで広く考えることや、診療の選択、マネジメントに関しても勉強します。私自身もそうでしたが、特定の病気や臓器などよりも、人の体全体や人そのものを診たいと思える人が向いているかもしれません。自分の考えを人に押し付けるのではなく、人の話をちゃんと聞ける人、患者さんを人として受け入れ、接することができるような人に選んでいただければと思っています。

将来の展望を教えてください

 地域医療に携わるために何でも診られるようになって、いずれはどこかの診療所で、地域の皆さんに頼ってもらえるような医師になることが目標です。まずは自分が今いる場所で、その場その場で適切な医療を提供できる医師になれるよう頑張っています。