自ら望むものであれば勇気を持ってチャレンジを。 ◆秋田GP列伝~ 守時 由起 先生編(2/2)

 秋田大学で5年生から6年生にかけて行われるClinical Clerkship 2(CC2)で総合診療・検査診断学講座をローテしてくださった皆さんに、自分の知りたい事や今後のライフプランなどに役立てる目的で実習に伺った病院の先生へインタビューを行い、医師としてのマインドやロールモデルなど学ぶ事を課題としています。こちらを『あきたGP列伝』として掲載します。

今回は、秋田大学医学部 総合診療・検査診断学講座 准教授 守時 由起 先生へ、豊田 舜さん(5年生)がインタビューを行いました。    前編はこちらから。

豊田】医師になってからはどのような道を歩まれたのでしょうか?

【守時先生】初期研修は由利組合総合病院で行いました。研修する中で、消化器内科における診療の幅広さに興味を持ち、東北大学の消化器内科肝臓グループに所属、大学院にも入りました。
その後は機会に恵まれてカリフォルニア大学デービス校に留学することとなりました。留学先で私が所属したのは原発性胆汁性胆管炎を中心に研究しているラボで、ボスであるM. Eric Gershwin先生からは「B細胞に関する研究をするように」と一言あっただけでした。
抗ミトコンドリアM2抗体を含む自己抗体を産生するB細胞を除去することで胆管炎が改善するかどうかというテーマを中心に研究を行い、時にはラボに泊まり込みで研究するなど、忙しくも充実した日々を送っていました。
 高校時代からの付き合いで、医師である友人が米国に遊びに来た際には、休暇を取ってヨセミテの大自然を訪れたこともありました。そのときに訪問診療専門のクリニックについて語り合い、その後、彼が秋田県内初の訪問診療専門クリニックを開設することになり、私も開設時のサポートをさせていただきました。
内閣府の高齢者の健康に関する意識調査でも、最期を迎えたい場所のトップは「自宅」です。その希望を叶えることができるのは、まさに訪問診療だと思います。
 その後日本に帰国することになり、所属していたラボのコネクションもあって、帰国後は中外製薬のメディカルサイエンス部に所属しました。

振り返ってみると、昔から漠然と抱いていた「患者さんの負担が少ない医療」という目標を中心にキャリアを積み重ねてきたように思います。

豊田】その後はどのような経緯で秋田に戻られることになったのでしょうか?

【守時先生】当時は関東に住んでいたのですが、父が交通事故に遭ったことから関東と秋田を往復する生活が始まりました。妻の両親も含めて4人が秋田にいたので、秋田に帰る検討を始め、植木先生にも相談して就職先を探す中で、植木先生が所属されていた「感染・免疫アレルギー・病態検査学講座」にお誘いいただいて、無事秋田で就職することができました。
 翌年には、医師キャリア形成支援センターのポストの学内公募があり、当時同センターの特任講師をされていた消化器内科の先生を存じ上げており一緒に働きたいと思ったこと、またシミュレーション教育を普及し医療技術をさらに向上させることで患者さんの負担を減らすことができると考えたことから、医学教育に携わることになりました。その後はシミュレーション教育センターの開設にも関わり、完成後はシミュレーション教育の普及促進や指導者養成を進め、さらに研修医向けセミナー構築・開催などを通じて医療レベルのさらなる向上を目指しています。
 沖縄で開催されたシミュレーション教育セミナー参加後に帰宅する飛行機内で、セミナー講演されていたハワイ大学の先生と偶然シートが隣同士となり、お話する中で秋田大学のシミュレーション教育拡充のため指導者養成などのご指導をしていただけることとなりました。その後はハワイ大学SimTikiシミュレーションセンターと連携しながら県内のシミュレーション教育拡充に努めています。
 シミュレーショントレーニングについては勿論のこと、学生、研修医、専攻医、医療スタッフの皆さんが、秋田大学から世界に羽ばたくことができるように、何かお手伝いできると良いなと思っています。

豊田】先生の歩まれてきた医師人生の中で、「患者さんの負担の少ない医療」は大きなキーワードだったのですね。また、大学時代から通して、先生は人の縁に恵まれていらっしゃったのだなと思います。最後に、医師を志す学生に向けて何かアドバイスをお願いします。

【守時先生】 学生時代には自由になる時間がまだ残されています。医学も医学以外のこともご自身の興味のあることを納得できるまでやってみていただきたいと思います。
その経験による知識・スキルと人脈がその後の人生の発展につながっていきます。多くの人と異なる選択をする場合もあるかも知れませんが、本心として自ら望むものであれば勇気を持ってチャレンジしてみてください!

前編はこちらから。

 《 Yuki Moritoki 守時 由起 》

  医学士・医学博士・認定医療シミュレーション教育者(CHSE)
  秋田大学医学部 総合診療・検査診断学講座 准教授
  秋田大学医学部附属病院 中央検査部 副部長
  秋田大学医学部附属病院 総合臨床教育研修センター 副センター長

  < 略歴 >
  神戸大学理学部物理学科 卒業
  秋田大学医学部医学科 卒業
  東北大学大学院医学系研究科 修了

  秋田厚生連由利組合総合病院 研修医
  東北大学病院消化器内科(肝臓グループ) 専攻医
  Division of Rheumatology, Allergy and Clinical Immunology, University of California Davis, School of Medicine 研究員(米国)
  富山大学大学院医学薬学研究部(医学)協力研究員
  中外製薬(株)メディカルサイエンス部課長
  帝京大学医学部附属溝口病院 第四内科 非常勤医師
  秋田大学医学部附属病院 中央検査部 助教
  秋田大学医学部附属病院 中央検査部 医学部講師
  秋田大学医学部附属病院 医師キャリア形成支援センター 特任講師
  秋田大学医学部附属病院 医師総合支援センター 特任講師
  秋田大学医学部附属病院 総合臨床教育研修センター 特任講師
  Adjunct Assistant Professor, SimTiki Simulation Center, University of Hawaii John A. Burns School of Medicine
  秋田大学医学部附属病院 総合臨床教育研修センター 特任准教授
  秋田大学大学院医学系研究科 総合診療・検査診断学講座 准教授
  秋田大学医学部附属病院 中央検査部 副部長
  秋田大学医学部附属病院 総合臨床教育研修センター 副センター長
  Adjunct Associate Professor, SimTiki Simulation Center, University of Hawaii John A. Burns School of Medicine(米国)

  < 免許・資格 >
  日本プライマリ・ケア連合学会認定医/指導医
  日本内科学会認定内科医/指導医
  日本肝臓学会専門医/暫定指導医/東部会評議員
  日本消化器病学会専門医/支部評議員
  日本消化器内視鏡学会専門医
  Certified Healthcare Simulation Educator (CHSE), Society for Simulation in Healthcare