2026.04.07 Tue
角館・田沢湖で過ごした実習期間について
秋田大学医学部医学科1年 佐藤音佳
今回あきた地域医療実習に参加させていただき、地域医療の現場を実際に見学・体験し、多くの学びを得ることができました。
私は主に市立角館総合病院にて実習を行いました。以前から地方で提起されている問題について知ってはいましたが、実際にその現場を見ることができ、より深く理解する機会になりました。
◆実習1日目
1日目は主に院内見学をし、途中にはドライブで角館や田沢湖に行きました。院内を案内していただいたときには、外来患者や入院患者の大半が高齢者の方々であり、若者の方々はあまり見受けられませんでした。この傾向は地方の病院になるほど高まると考えます。また、病院で働いている医師はほとんどが非常勤であり、特に麻酔科医は岩手医科大学から特定の曜日にしかお越しになれないため、渋滞などに捕まると手術が時間通りに進められない可能性があると考えられます。
午前にはほかに、角館総合病院内の地域連携室を見学しました。そこでは社会福祉士の方のお話をお聞きしました。社会福祉士の業務には連携業務と相談業務があり、さらに連携業務は前方連携と後方連携があるということを学びました。連携業務とは院内外との連携を図りながら連絡や生活上の課題解決の調整を行うことであり、相談業務とは患者や家族の方々の悩みや困り事に寄り添い、共に考え支援を行うことであると理解した。社会福祉士の業務では、患者の方々の価値に寄り添い、その方がどう在りたいかという本人の意思や医療と生活者などの多面的な視点を大切にしていることを伺いました。この意識は、なるべく患者の意向に沿った医療を提供するうえで医師にも必要であると感じました。
午後には、ドライブで角館町内と田沢湖に行き、観察しました。どちらの場所でも観光客の方々が
たくさん見られました。春になり桜が咲き始めると、より観光客が増え町中が活気に溢れると考えます。
◆実習2日目
2日目は田沢湖病院と西明寺診療所に伺いました。
午前に訪問した田沢湖病院では、主に院内見学をしました。病院長の話をお聞きする機会もあり、そこで田沢湖病院の入院病床が残り2年で休止してしまうことを知りました。病院は災害時の拠点となるため、それが1つ無くなってしまうと新たな問題点が出てくると思いました。午後に訪問した西明寺診療所では、主に医療MaaSの見学や同行をしました。医療MaaS車両内には、電子聴診器や心電計、エコー、AEDなどの診察に必要なものや、カメラやスピーカー、ディスプレイなどの対話に必要なものが搭載されており、ある1つの診察室であるように感じました。また、必要ならば処方された薬は薬剤師の方が配達を行っていることも聴きました。その日は2件のオンライン診療が予定されていました。
1件目では看護師の方々と一緒に医療MaaSで現場に出向き、実際に車内で行われている診療を見学しました。2件目では、医師のいる診療所内からオンライン診療を見学しました。距離が離れていても画面越しで対面や会話を交わしながら、機器を使用し情報を得て診療していくため、通常の診療とほぼ同の効果を得られているのではないかと感じました。しかし、2件の診療を通して、会話がかみ合っていない場面があったり、電子聴診器の接続に不具合があったりするところを見かけることもありました。また、オンライン診療では診療所から患者のご自宅までの移動時間があるため、対面での診療と比べると、同じ時間内に診られる患者数が減るのではないかと思いました。西明寺診療所の所長のお話を伺うと、医療MaaSに衛星通信の機器が導入されているが、天候や場所に左右され電波が障害されることもあるということを知りました。ほかにも、医療MaaSの車両を稼働させるためには1台につき約4000万の費用がかかることも分かりました。医療MaaSにより高齢者の孤立や孤独化を軽減し安心感や信頼関係を維持できるという利点がある一方で、費用の負担や時間的・場所的限定があるという課題点も残っているため、行政との協力が必須であると考えます。
◆実習3日目
3日目は主に実際に社会福祉士の方と患者の方との面談の見学や外来見学実習に参加しました。
午前では、社会福祉士さんと患者さんの面談を2つ見学させていただきました。2つの面談では、患者の方の目を見て話し合い、ご本人の認識や思い込み、価値観を否定していなかったり、ご本人の意思を確認してそれに沿って今後の方針を決めていたりしていたことが共通点であると気づきました。1人目の方は饒舌であり自分の状態を積極的に話している一方で、2人目の方は口数が少ないようでした。その点に注目すると、社会福祉士の方の会話や説明の仕方が違うことに気が付きました。そのため、それぞれの患者の方々の性格や人柄に応じて自分を適応させていくことが重要であると感じました。また、社会福祉士の方のお話を伺うと、今回見学した2人の患者の方々はどちらも複数回面談を重ねていて、初対面の方との面談はまた違ってくることも知りました。初対面のときから自分のことを自発的に話す人は少なく、初対面の方にはまず自分自身のことについて情報を提示したり、ご本人に興味を示していることを伝えたりして歩み寄るということを意識していると分かりました。他にも、なるべくできることを伝えて患者の方々を混乱や不安にさせない工夫をしていたり、全ての情報を受け取るのではなく、必要な情報だけを知り深めていく情報の取捨選択を意識していたりすることも知ることができました。社会福祉士の方が意識したり考えたりすることは、総合診療医も同様にできていなければならないということを改めて実感する良い機会となりました。
午後には、一緒に実習していた同大学4年の佐々木さんとともに外来で来ていた初診の方を実際に診察しました。佐々木さんが主となって診察を進めていき、私はその側で見て学ぶという感じでしたが、実際の医療現場で行う診察は、大学で行うOSCEが基盤となっているものの発展的な要素が多いように感じました。患者の方の訴える症状から的を絞っていき、原因を突き止め治療計画を立てていく難しさを身をもって感じることができました。また、診察後にはカルテの書き方も学ぶことができました。本来これらを体験したり学んだりすることは1年ではなくもう少し先のことだと思っていたので、今回の実習でこれらのことができて大変勉強になりました。
この3日間を通して、私はある1名の入院患者の方とお話しさせていただく機会がありました。
その患者さんは、ご自宅の水道が壊れて日常生活がままならなくなったことにより、ある疾患を患い入院されました。ご本人から話を伺うと、元々人や社会とのつながりが少なかったり、日頃の楽しみや趣味も無かったりしながら長年一人で過ごしていたそうです。そのため、普段の生活におけるコミュニケーションの機会やいざとなったときに頼れる人が少ないように感じました。このことから、もし水道が直ってご自宅に戻れたとしても、再び水道が壊れたら同じ状況に置かれ再入院の可能性がありそうだと思いました。ご本人もこの現状や問題を自覚しているようでした。このようなリスクを防ぐためには、ソーシャルワーカーの方などを介して行政との連携を強めたり、地域住民の方々との交流の機会を提案したりしてサポートしていくことができるのではないかと考えました。
この3日間の実習を総合的に見て、方言の壁を痛感することが多かったように感じました。入院患者の方との交流のときや外来を見学している際の医師と患者の会話を聴いているときなどに、患者の方のおっしゃる言葉の意味が分からなかったり、逆に地元の方言しか通じないという患者の方に出会ったりしました。そのときにどのようにコミュニケーションをとるかが私の新たな課題であると気づくことができました。その課題の解決のためには、日頃から方言の情報を収集していくだけでなく、実際に会話しているときに分からなかった際には都度調べたりご本人に聞いたりすることが必要になると思いました。
今回実習に参加して、機器で調べて画面越しに見たり人づてに聞いたりしていただけでは気づくことができなかった、その地域だけでなく自分の問題点や課題点に気づくことができました。
自分の将来の役に立つ、充実した時間を過ごすことができました。このような貴重な経験をさせていただき、大変ありがとうございました。