好きな児童書の話

秋田大学医学部付属病院総合診療部で実習中の秋田大学医学科5年 佐藤正礼です。

これは、ただただ私の趣味共有欲の発散です。

総合診療部での実習やイベントについては、ほかの学生が素晴らしい記事を沢山書いているので私は普段の趣味について書いてみようと思います。私は車を持っていないので行動圏も限られ、したがって秋田の名所といった話はできません・・・ごめんなさい、趣味は読書です。

この記事で一冊の本を紹介したいと思います。

「怪物はささやく」 シヴォーン・ダウド原案 パトリック・ネス著

私が小学生の頃に読んで以来、最も心に残っている本であり実家の茨城から秋田に持ってきて、今も手元にある児童書です。表紙はぼろぼろでテープで補修されているけれども・・・

闘病中の母と二人で暮らし,母の病ゆえ学校で腫れ物扱いを受ける13歳の少年コナー・オマリー 

毎夜、同じ悪夢にうなされる彼のもとに現れたイチイの木の怪物は言います。

「わたしが三つの物語を語り終えたら、今度はおまえが四つめの物語をわたしに話すのだ。おまえは真実を語るのだ」

 怪物がコナー・オマリーのもとを訪れた理由とは何なのか。怪物よりも怖いものを見たことがあると言う彼が語らねばならない真実とは何なのか。

「怪物はささやく」はそんなお話です。

あらすじで予想のつく方も多いと思うので言ってしまいますが、闘病中の患者、その13歳の息子を主人公に据え、患者家族の現実と残酷な感情を巧みな心理・情景描写で書いたまぎれもない名作です。初めて読んだ時、当時の私は内容を全部は理解できなかったものの、この本の持つ感情の凄まじさに圧倒され何度も読み、表紙を擦りきらせるに至りました。

この本の最も素晴らしい点は、このテーマを、大人が感動できる濃度を保ちながら児童書として書き上げた点にあると思います。この本に小さな頃に触れ、考える機会を持てたことは非常に幸運で豊かなことだったと思います。疾患が持つ社会的側面の重要性や患者家族の苦痛について、児童文学という媒体で自然に理解を含めることができたため、この本は私の目標とする医師像や医療像に少なからず影響を与えているように思います。

この記事を読んでいる児童の皆さま方、ぜひ読んでください。児童以外の皆さま、ぜひ絶対に読んでください。そしてもし感動されたら、お子様に読ませてみてください。

最後に白状すると・・・

私がこの本を読んだ理由はあらすじなど関係なく、タイトルが格好良いからでした。

“世界の怖い話“を読んだ勢いでこの本を開いた当時の自分と、この本を買ってくれた両親に心から感謝しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。