JPCA秋田県支部総会を開催しました

11月22日に日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)秋田県支部総会を開催しました。今回は以下のように「県支部総会」「特別講演」「ワークショップ」の3部構成でした。


県支部総会

専攻医、薬剤師、看護師からの活動報告があり、少しずつですがプライマリ・ケアの輪が広がっていることを実感でき、とても嬉しかったです。

特別講演:「仮想化総合病院を目指して — AIと地域医療がつなぐ次世代プライマリ・ケア」

横手でご活躍されている細谷内科医院 の細谷 拓真先生からご講演いただきました。
題名のとおり“仮想化総合病院”構想に基づき、最新のAI技術や IoT を駆使した地域医療の将来像についてのお話で、とても刺激を受けました。

 ここでいう「仮想化総合病院」とは、必ずしも一つの巨大な施設を意味するのではなく、地域のさまざまな医療・福祉機関が、それぞれの「得意分野」を共有・連携し合うことで、地域全体を“総合病院のようなケアネットワーク”に近づけるという構想です。医療ソーシャルコーディネーターを配置し、センター的な医師がハブとなって他の医療機関や開業医に仲介相談できる体制を整えることで、診療の幅や質を底上げする、というイメージとのことでした。

また、AI や IoT(たとえばスマートウォッチなどのウェアラブル機器)を使ったモニタリングで、在宅患者や高齢者のバイタルや異常をリアルタイムで管理・監視し、異常時には通知・早期対応可能にする──こうした「リモート患者モニタリング」の導入は、医師不足・地域偏在のある地方の医療において非常に有用です。実際、医療DXの導入は、患者さんにとっての利便性向上だけでなく、医療者の負担軽減、医療資源のより効率的な活用につながるとされています。

さらに、講演では「将来、医師数が減っていく(2040年には半減以下になる可能性)」という危機感から、“AI を利用して医師1人が2倍の働きをできるようにする”という提案もありました。これは、過疎地や高齢化が進む地域における医療提供体制維持のための一つの答えであると感じました。

この講演を聞き、多職種・地域医療連携の重要性、そしてそれを支えるIT/DXの可能性について、改めて「次世代プライマリ・ケア」のビジョンが具体的に見えてきたように思います。


ワークショップ:来年 秋田で開催予定の JPCA 東北支部学術集会に向けて

ワークショップでは、2026年9月26日〜27日に秋田市で開催予定のJPCA学術集会東北支部集会 の企画について、参加者全員で話し合いました。
特に多かった意見としては、先の「仮想化総合病院」が始動後、半年ほどたった時点での“報告会”(導入状況・成果・課題の共有)を希望する声。

そして、秋田県ならではのテーマとして“クマによる外傷”など地域特有の医療ニーズや、塩分摂取量が高いという地域性を活かして漬物などの試食をしてはどうかという提案も出ました。医療資源や地域特性を見据えた、実践的で地域に根ざした学術集会になりそうで、私も今から楽しみです。


所感・これからに向けて

今回の総会を通して感じたのは、プライマリ・ケア/地域医療という言葉が、これまでの「診療所での対面診療」だけでなく、時代の変化に応じて“形”を変えながら進化しているということです。
特に「医療DX」の推進は、単なる利便性向上や効率化にとどまらず、「地域医療の再構築」「医療アクセスの確保」「ケアの質と安全性の向上」を本質に据えた取り組みだと思います。実際、我が国でも 厚生労働省 は医療DXを重要な政策と位置づけており、「医療DX令和ビジョン2030」などを通じて、電子カルテの標準化、全国医療情報プラットフォームの整備、医療–介護の連携強化などを進めています。

また、来年秋田で開催される学術集会では、こうした「次世代プライマリ・ケア」「地域医療DX」「地域特有の健康・災害課題」をテーマとし、多職種・多施設が集う場にできれば、秋田らしい、かつ先進的な学びの場になると期待しています。

田染 翔平