コミュニティ・ドクターフィールドトリップ@五城目に参加して

秋田大学医学部医学科1年  佐山 綾乃

初めに、コミュニティ・ドクターフィールドトリップ@五城目を開催していただき、ありがとうございました。このイベントに参加して、様々な人と交流し、意見を交換する中で新たな発見や考えたことがたくさんありました。

まず、最初のレクチャーで様々なお話を聞いて、コミュニティ・ドクターについての理解が深まりました。

病院を受診する人は対象者1000人のうち約300人と、地域に暮らす人のほとんどが病院と関わりなく生活しているということや、健康を規定する要素は70%が身体以外の社会的要因にあるということを知り、人間の健康状態は社会と密接に関わっており、医療が介入できる部分は思っていたよりも限られていると感じました。また、上流理論の説明では、患者を治療しても次から次へと新たな患者がやってきて永遠に同じことを繰り返しているように感じられる医療現場の状況を改善するためには、病気を生み出す社会の構造を見直すなど、病気の川の上流へのアプローチが大切であるということを学びました。

このようなことから、「病院から町に飛び出して、地域に暮らす人々とともに健康で幸せなまちづくりを探求、実践する」というコミュニティ・ドクターの意義がよく分かりました。
さらに1日目の地域の人へのインタビューでは、患者の意外な視点に気付くことができました。
医療に関する話題で、医師が親身になって考えてくれることはありがたいけれど、あれもこれもと提案されて検査をされたりするのは少し面倒くさかったり、気が滅入ってしまったりすることがある、相談したことだけ答えてくれたら良いと思っているというお話を聞き、驚きました。医学部に入ってから授業や実習を通して、患者のことを丁寧に診ることの大切さを学んできていたので、それを煩わしいと感じる人もいると知ることができたのはとても貴重な経験になったと思います。

医療現場にはこのように様々な考えをもつ患者がいるということを頭に入れ、それぞれにあった対応を模索していくことが大切であると感じました。また、そのような患者の思いは、病院内での医師対患者の構図ではなかなか聞き出すことができないということも実感し、改めて、医師が病院から町に飛び出して、同じ地域で暮らす人として患者と関わることの重要性が分かりました。

さらに、朝市プラスでは活気のある町の様子を実際に見たり、地域の方と交流したりして五城目町の良さを見つけることができました。高校生が考案したスイーツを売っているカフェや政治家の謎の似顔絵がたくさん貼ってある大判焼きのお店、宝探しと称して使わなくなったものを無料で置いているお店、自分の「好き」がつまったハンドメイドのものを売っているお店など個性豊かな出店ばかりで歩いているだけでとても楽しかったです。
普段の生活の場にあるお店はコンビニやスーパーなど量販店ばかりで均一化されたものが良いものとされているのに対し、五城目朝市では違いなども含めて個性として受け入れられているような雰囲気を感じ、朝からとても心が温かくなりました。

秋田の魅力発見/in五城目朝市 | makidesign's LOG

また、地域を歩くフィールドワークを通して、大学の課題で読んだ「医師・医学生のための人類学・社会学」という本の内容を思い出しました。今回のフィールドワークは医療人類学・医療社会学の観点では、自分と異なる背景をもつ他者を当事者の視点から理解する(異質馴化)、自らの考えや価値観を批判的に捉え直す(馴質異化)といったエスノグラフィックなものであると感じ、学んできたことが点と点で繋がったような感覚がしました。コミュニティ・ドクターだけでなくこのような視点は今後全ての医師に求められることになると思うので、1年生のうちに現場に身を置いて学ぶ体験ができてとても良かったと思います。

このイベントに参加して、他の参加者の発表を聞いたり、意見を交換したりするなかで、みんな自分の「あ、これ好きだな。」という感覚がはっきりしているなと感じました。
それに比べて私は自分の好きなものや心を動かすものを見つけたり、それを言語化したりすることが苦手だなと感じました。また、レクチャーなどで他の参加者の質問を聞いて「たしかに気になる」と思うことも多くありました。このように頭のどこかで考えていたり、感じていたりすることがあってもそれを自分で拾えていないなと思うことが多くあったので、今後は、もう少し自分の感じていること、考えていること、また、直感的に好きなものなどに気づけるように意識して生活していきたいと思います。
最後になりますが、このたびは貴重な経験をさせていただきありがとうございました。

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