総合診療を通じて探る、医療と人生の交差点

 秋田大学で5年生から6年生にかけて行われるClinical Clerkship 2(CC2)で総合診療・検査診断学講座をローテしてくださった皆さんに、自分の知りたい事や今後のライフプランなどに役立てる目的で地域の病院へ実習に伺い、医師としてのマインドやロールモデルなど学ぶ事を課題としています。実習を終えた感想をご紹介します。

 「総合診療を通じて探る、医療と人生の交差点」 CC2 中林遼太朗さん

 総合診療の実習は、非常に濃い。本格的な問診から地域の病院の見学まで、自ら現地に赴き医療を体験するのだ。その中でも特に印象的だったのが、地域病院での実習だった。
私はこれまでの3週間の実習で、5つの病院を巡らせていただいた。大学病院、さくら内科・糖尿病クリニック、秋田往診クリニック、協和病院、そして湖東厚生病院だ。

五城目町の小学校跡から発信する大学の分室より

それぞれの病院で
「総合病院の地域における役割」
「生活習慣病を抱える患者さんとの対話」
「在宅医療にどう向き合うか」
「多職種だけでなく、多機関の連携を」
「地域を診る総合診療医」
という様々な角度から『総合診療』を学ばせていただいた。現場を踏むことに、少しずつ繋がっていく。そして、それが言葉になるきっかけとなったのが、湖東厚生病院でお世話になった総合診療医の漆畑宗介先生だった。

 私は「総合的にヒトを診る」という私が幼い頃から抱いていた医者の姿に重なる総合診療の考え方が非常に好きで、一方で医学だけでは力になれないときもあるという矛盾にも近い考えを抱いてきた。そんな私の感情を、言葉にしてくれたのが今回の実習だった。そして、それは矛盾するものではなかったのだ。
「例えば、頭痛の患者さんが来たとして、医学的には頭痛薬を出せばいいと思うんです。でも、それだと根本的な原因が解決していないこともあって、仮にもしその人が育児の多忙によるストレスをきっかけに頭痛を起こしていたら・・・。その時は、医療に限らずベビーシッターなどを紹介できるようにしたいんです」

そんなめちゃくちゃな私の考えを、漆畑先生は頷きながら受け止め、こう返してくれた。
 「それなら医療の多職種に限らず、様々な機関を『統合』してみるのはどうだろう。例えば隣の井川町では、診療所と地域包括支援センターが同じ建物内にあって……」その時頭をよぎったのは、山口一孝先生に案内していただいた協和病院だった。そこは病棟から老人ホームまで、複数の医療施設が並んでいた。私のイメージはロボットの開発部門などもある複合施設、或いは融合施設だが、漆畑先生の言葉がぐっと刺さったのはここに来れたからだと思う。
 同じように、地域に触れて気づくことは多い。漆畑先生に五城目町をご紹介いただいて高齢者の方が集まるサロンに参加したり、往診クリニックで市原利晃先生と在宅の方を回ってみたり。そして、通院できる方が身近に来れる場所が、粟崎博先生のような診療所である。どれも欠かせなくて、どれも繋がっていることをひしひしと感じた。

 私は兼ねてより「やりたいこと全部やって、あの時あれできてよかったって思える死に方をしたい、そんな生き方をしたい。相手も自分も楽になれるようにしたい」と考えてきた。
しかし、それが医療しかない病院とは考えにくかったし、一方で私のイメージしているものが機能するかどうかも分からない。だけど、そんな場所を作りたい。ワーク・ライフ・バランスではなく、ワーク・アズ・ライフな空間で、私自身も、私が大切に思う人も、納得して人生を終えられるようにしたい。

湖東厚生病院でお世話になった先生方と同級生

 この実習は、そんな私の想いを言葉にしてくれる時間となった。そんな今に至るのは、病院の方々と地域の皆様のおかげに他なりません。短い時間ではありましたが、本当にありがとうございました。