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高度救急救命センター  特任助教 佐藤佳澄 先生

 秋田大学医学部医学科を卒業し、当病院などで2年の研修を終えた後、救急医として勤務して今年で5年目になります。現在、当大学医学部附属病院に併設され、幅広い領域の病気を診る総合診療医の養成拠点「総合診療医センター」に所属しています。

日常的には、救急専門医として救急外来の対応に当たっています。さらに、集中治療室では、病気の種類を問わず、重症度の高い急性期の患者さんを診ています。

 最近は、研修医や学生向けの講師も務めており、臨床現場で研修したり、講義を行ったりすることのほか、外部の病院へ出張して救急診療関連のスキルトレーニングにも取り組んでいます。

 また、地震や河川の氾濫など災害のほか、例えば、最近では新型コロナウイルス感染症の拡大が発生した大型客船における対応などに当たる災害医療チーム「日本DMAT」にも所属しています。

救急医を目指した理由を教えてください

 学生時代は特定の臓器に関わるのではなく、全身性の疾患を扱う内科、特に血液内科に関心がありました。その後、研修医として働くにつれて、重症度の高い患者さんを総合的にマネジメントする救急・集中治療に携わりたいと考えるようになりました。秋田県内には、もともと生え抜きのジェネラリストがとても少ないのですが、特に若手の救急医は全くいないという状況でした。

私は、幅広い患者さんに対応できる医師を目指していたこともあり、集中治療を専門とする医師になりたいとの思いを強くし、現在にいたります。

救急医としてのやりがいと総合診療医の関係を教えてください

 救急医としては「この治療が失敗したら患者さんを救うことができない」という差し迫った局面に何度も向き合いました。そして、患者さんがなんとか助かったときには、大きなやりがいを感じます。

また、日々、緊急度の高い状況に向き合っているため、判断力がどんどん磨かれていくのを感じています。判断力は、救急医の技術のひとつだと思っています。

 秋田県は全国的に見ても高齢化が進んでいますが、一般に高齢者は、体に抱える問題が多岐にわたる上、ご自身の症状をうまく説明することのできない傾向があります。侵襲的な治療をどの程度施すことが最適かといった患者個別性の高い問題もあり、高齢者救急は特有の難しさとやりがいがあります。

 総合診療を救急医の観点から見ると、さまざまな病態の患者さんに対応しながら適切な判断を下していくという側面は共通しているのではないかと考えています。また、総合診療医を養成する際に救急医療を学ぶ効能は、ほかの点にもあると考えています。どのような状態の患者さんを救急医療機関に紹介するべきか、そして、どのような経過で再び自分の診療現場に戻ってくるかを知ることができるという点です。

「総合診療医センター」と総合診療の現状と展望を教えてください

 秋田県には救急医療、急性期医療という側面における総合診療のキャリアや教育を担う、生え抜きの若手医師はほかにいません。また秋田県内の若手救急医としてもキャリアの先陣を切っているという状況です。

 かつての総合診療医というと、ほかの専門を持つ医師が総合診療医に転向するケースが多かったようですが、近年では、当初から総合診療医としてキャリアをスタートさせる医師が増えているのが全国的な傾向です。残念ながらこの点において、秋田県は遅れを取っているのが実情です。これからますます高齢化が進み、多重プロブレムを持つ患者さんが増加する秋田県には、総合診療医の養成は大きな課題です。

 私の専門とする救急・集中治療分野も総合診療の一側面と考えると、この面でも課題は多くあります。救急・集中治療の専門的な担い手は秋田県内には数えるほどしかおりません。特にこの傾向は郊外にゆくほど顕著であり、救えるはずの患者さんを失ってしまうことのない地域にしていく必要があります。救急医や集中治療医の人数を増やして、私たちの能力を高めるということはもちろん、郊外まで患者のもとに医師が赴くことのできる診療体制など、医師や病院の少なさを補える仕組みを作っていきたいと考えています。

 都市だったら助かったのに、という事態をなくしたい思いで頑張っています。