「治らない患者さんの残った時間を良いものにする医療」をやりたい ◆あきたGP列伝 杉本侑孝先生編

 秋田大学で5年生から6年生にかけて行われるClinical Clerkship 2(CC2)で総合診療・検査診断学講座をローテしてくださった皆さんに、自分の知りたい事や今後のライフプランなどに役立てる目的で実習に伺った病院の先生へインタビューを行い、医師としてのマインドやロールモデルなど学ぶ事を課題としています。こちらを『あきたGP列伝』として掲載します。
今回は、秋田大学医学部付属病院緩和ケアセンター杉本侑孝 先生へ佐藤達朗さんがインタビューした内容をご紹介します

【佐藤】緩和ケアセンターでは、具体的にどのようなことを行っていますか。

【杉本先生】様々な疾患でお悩みの患者さんの症状を和らげながら治療を行い、安心して生活できるような環境づくりを主治医の先生方と協力しながら行っています。

【佐藤】仕事において大変なことや、やりがいを感じることはどんなことですか。

【杉本先生】秋田大学の緩和ケアセンターの医師には受け持ち患者がおらず、主治医として患者と接するわけではありません。そのため、主治医の先生へのアドバイス出しが、我々の主な仕事となります。自ら直接処方などの指示が出せない点がもどかしいところですね。
また、苦痛の原因は複雑で非常に難解です。ですが、それをひも解いて原因を突き止めていくことこそが、この仕事の醍醐味でもあります。

【佐藤】どういった経緯で緩和ケアの道に進もうと思ったのですか。

【杉本先生】私はもともと消化器内科医で、働き始めてはじめのころに、30代の膵癌末期患者を立て続けに担当しました。そこで目にしたのは、まだ小さい子供との最期の時間を大切にする患者さんの姿でした。その時私は、予後の過ごし方をケアすることは、病気を治すことと同じくらい大切だということを実感しました。世の中には、病気を「治そう」と奮闘する医者はいくらでもいます。その中で自分は、「治らない患者さんの残った時間を良いものにする医療」をやりたいと思ったのです。

【佐藤】先生が思い描く、秋田県の緩和ケア医療、および総合診療の展望を教えてください。

【杉本先生】「総合診療医」と聞くと、難解な疾患の原因を突き止める「ドクターG」のような医者をイメージする方が多いと思いますが、日常のあらゆる疾患に対して全人的医療を行う「家庭医」もあります。総合診療にはこの両方の側面があり、そのどちらにも魅力があります。2つのイメージ間のギャップを取り除いていくことが今後の総合診療の発展につながるのではないでしょうか。


 また、「家庭医制度」を普及させていくためには、「往診」という形で踏み込んでくべきだと思います。「訪問診療ステーション」を作り、そこから医師を派遣して往診を行うシステムを構築すれば、今後の地域医療がより発展していくのではないでしょうか。

【佐藤】最後に何か、残しておきたいメッセージはありますか。

【杉本先生】 緩和ケアは非常に楽しいです! そして人が足りていません! 興味をお持ちの方、お待ちしています。

後述
杉本先生、今回インタビューを受けてくださいまして本当にありがとうございました。ひとりひとりの患者さんと目を合わせて緩和ケアを行いながら、秋田県の総合診療の未来まで見据えている姿が素敵でした。「訪問診療ステーション」が実現し、患者さんにとっても医師にとっても地域医療がより身近なものになっていってほしいですね!

《 Sugimoto Yuukou 杉本 侑孝 》
秋田大学医学部附属病院緩和ケアセンター助教、副センター長

秋田大学医学部医学科卒業
秋田大学大学院医学系研究科博士課程修了
秋田組合総合病院初期臨床研修医
秋田大学医学部附属病院第一内科医員
市立横手病院消化器内科医員
秋田大学医学部附属病院第一内科医員
秋田厚生医療センター救急総合診療部科長
東北大学病院緩和医療科医員
秋田大学医学部附属病院緩和ケアセンター助教、副センター長
<免許・資格>
日本内科学会認定医
日本緩和医療学会認定医、研修指導者
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本肝臓学会専門医
日本病院総合診療医学会認定医、(2023年4月から)特任指導医
日本医師会認定産業医